04米の機能性玄米と玄米粉の加工適性、健康機能性と利用
1玄米と玄米粉の加工適性
玄米には、ビタミンやミネラル等の健康機能性成分が、精白米よりも多く含まれているというメリットがある一方で、ぬか層が除去されずに残っていることで、精白米と同様の炊飯方法では食感が硬くなってしまうことや、摂取後に体内での消化性に難があるなどの評価もあります。このような玄米の特性のうち、健康機能性成分を有効に摂取できる方法の一つとして、玄米粉に加工することで、粒食での硬い食感などを解消する利用方法が昨今注目されております。
玄米を粒食で摂取してもおいしく食べられるための技術開発や、商品開発等の説明は他の章をご参照いただき、本章では玄米粉を利用するにあたっての留意点について以下、紹介していきます。
(1)玄米、玄米粉の利用にあたっての留意点
近年、米粉は製粉技術の進歩とパンや洋菓子、麺などに対する用途開発、さらには米粉専用品種の開発などによって、利用拡大がすすみ、加工食品における米粉市場も拡大しております。そのような中において、精白米を製粉する通常の米粉とは違い、玄米を製粉する玄米粉においては、利用する上で、以下のような留意点があります。
1)でんぷん損傷度のコントロールが難しい
ぬか層を除去せず残している玄米は、ぬか層による胚乳部への吸水が阻害され湿式粉砕が難しいことから、玄米のでんぷんを傷つけずにコントロールしながら細かく粉砕することが難しくなっています。それにより、米粉よりも粒子が粗く、でんぷん損傷度が高い玄米粉ができる傾向があります。
2)品質の安定性が難しい
玄米のぬか層や胚芽には不飽和脂肪酸の多い油分が多いことから、製粉工程を経て粉末化することによって脂質の酸化が進みやすくなります。このため、風味について、玄米粉では劣化を感じる傾向が顕著に起こります。保管や流通における品質の安定性に欠けることになります。
3)吸水度が高く、粉状体の維持が難しい
ぬか層には保水力のある食物繊維やアラビノキシランといった成分を含んでおり、玄米粉は通常の米粉に比べて吸水が高くなります。そのためパンやホットケーキなどに玄米粉を加工利用する際は、通常の米粉に比べ加水量を増やす必要があります。
4)菌数が多く、衛生的品質安定性が難しい
玄米のぬか層は、米粒から籾殻を除いただけのものであり、研磨された精白米と比較すると菌数が多くなります。
(2)玄米粉の使用
これらの玄米、玄米粉の特性から、玄米粉を加工食品産業として利用する際には、加工形態や添加量に制限が生じます。玄米粉は品質安定性が難しいことなどから非加熱調理の食品には使用できないのはもちろん、パンや洋菓子、麺などに利用する場合は、でんぷん損傷度が高いことから、玄米粉だけでパンや洋菓子、麺など、加工食品の良好な食感を物理的に再現することが難しく、小麦粉の数~20%程度を置き換えて利用することが多いようです。また、香ばしさの風味付けに玄米を焙煎することで、風味の劣化や菌数の問題を解消した焙煎玄米粉などが利用される事例もあります。
最近では上記の課題を解消して、用途によっては米粉と同様の使い方ができる玄米粉も製造されるようになってきましたので、今後、さらなる加工適性に優れた玄米粉が開発されれば、市場に広く普及していくと予想されます。
2玄米粉の健康機能性
玄米粉は米粉と比較して、その特性や加工適性における課題がある一方で、玄米に由来する栄養成分をはじめとした健康機能性に期待をもたれています。これらの健康機能性については、玄米粉の製造方法によるとこもありますが、一般的には、以下のような健康機能性が挙げられます。
1)栄養成分
米粉よりもビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています(図表1)。
図表1 玄米と白米の成分組成
(単位:mg)
栄養成分 | 玄米 | 精白米: うるち米 |
---|---|---|
食物繊維総量 | 3 | 0.5 |
ナトリウム | 1 | 1 |
カリウム | 230 | 89 |
カルシウム | 9 | 5 |
マグネシウム | 110 | 23 |
リン | 290 | 95 |
鉄 | 2.1 | 0.8 |
亜鉛 | 1.8 | 1.4 |
銅 | 0.27 | 0.22 |
ビタミンE α-トコフェロール |
1.2 | 0.1 |
ビタミンB1 | 0.41 | 0.08 |
ビタミンB2 | 0.04 | 0.02 |
ナイアシン当量 | 8 | 2.6 |
ビタミンB6 | 0.45 | 0.12 |
資料:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
注 :数値はすべて、100g当たりの値。
2)機能性成分
玄米には、玄米特有の生理活性成分であるγ-オリザノールやフィチン酸やイノシトールといった機能性成分が含まれています※1。
3)発芽玄米
玄米に発芽処理を行うことで、さまざまな生理機能を持つ成分のギャバ(GABA:ガンマ-アミノ酪酸)を増加させた発芽玄米粉などが製造できます※2。
消費者の健康志向が定着するなか、玄米粉は、米粉にはない栄養素や機能性成分を摂取できる素晴らしい食材として期待されます。
参考文献
- 大坪研一「食品機能性の科学」596-599産業技術サービスセンサー(2008)
- 大坪研一「食品機能性の科学」596-599産業技術サービスセンサー(2008)