03米と健康米と栄養

米の構造

米は、イネに実るもみの食用部位です。籾から籾殻を取り除いたものが玄米で、植物学的には果実に相当する部分になります。玄米のいちばん外側の層が果皮で、その内側の種皮が胚乳と胚(胚芽)をつつんでいます(図表1)。
胚乳は、糊粉層と胚乳でんぷん層と呼ばれる組織からなります。玄米の91~92%が胚乳でんぷん層です。胚は、発芽して根や葉となる組織で、玄米の2~3%ほどです。果皮と種皮、胚乳の一部である糊粉層をまとめてぬか層といい、玄米の5~6%を占めています。発芽時の養分を貯蔵する胚乳でんぷん層はでんぷんを主体とするのに対して、胚芽はたんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラル、果皮と種皮はミネラルや食物繊維など含んでいます。

図表1 玄米断面

玄米断面

米の特質

(1)米の搗精度

精白米は、玄米からぬか層と胚芽を取り除いたもので、この操作を 搗精 とうせい (精白)といいます。玄米に対する精白歩留りが90~92%のものを精白米、精白歩留り93~94%を七分つき米、精白歩留り95~96%を半つき米と呼びます。このような過程で生じる米ぬかは、脂質を20%ほど含み、米油(米ぬか油)の原料に利用されています。米油には機能性成分のγ-オリザノールなどが含まれています。
米の種類による成分の違いは、玄米と精白米が顕著であり、とくに脂質やビタミン、ミネラル、食物繊維に差がみられます。精白米が、玄米に比べてこれらの成分が少ないのは、搗精が進むにつれて胚芽やぬか層が取り除かれていくからです。
一方、玄米からぬか層のみを選択的に取り除くという特別な方法により胚芽を残した米は、胚芽米(正式には胚芽精米)と呼ばれます。胚芽米の品質基準は、胚芽保有率80%以上であり、搗精で失う胚芽の栄養成分をとどめた米ということになります。

(2)小麦との比較

主食としての米は、炊くあるいは蒸すなどして粒食されますが、このような食べ方は製粉して利用する小麦との大きな違いとなっています。米は、胚乳がかたく、摩擦などの衝撃で砕けにくい性質があるのに対して、小麦は外皮がかたく、胚乳が比較的やわらかいために砕けやすいことや、粒溝と呼ばれる溝部分のふすまを除去しにくいことなどが、小麦粉に加工して利用する構造上の理由とされています(図表2)。
消化率は、小麦の場合は粒食で消化率が劣り、粉食のほうが良いとされています。米は粒食と粉食で変わりがなく、米の幅広い利用が期待されるところです。

図表2 玄小麦の断面

玄小麦の断面

米の栄養成分

(1)でんぷん

米の成分は、炭水化物が70~80%を占めています(図表3)。そのほとんどがでんぷんで、エネルギー源として重要な成分です。米のでんぷんは、アミロースとアミロペクチンからなり、精白米(うるち米)での構成比率は2:8程度であるのに対して、精白米(もち米)のでんぷんはほぼ100%がアミロペクチンです。うるち米のアミロースとアミロペクチンの比率は、品種や生育条件などによって異なり、アミロースの割合が低いほど粘りが強く、冷めてもかたくなりにくい米になります。
食物繊維は、精白米に比べて搗精前の玄米の方が多くなり、胚芽米にも100g当たり1.3gほど含まれています。

図表3 米および小麦の搗精歩合別成分組成

横にスクロールします。

玄米 半つき米 七分つき米 精白米:うるち米 精白米:もち米 はいが精米 強力粉:1等 強力粉:2等
エネルギー kcal 346 345 348 342 343 343 337 343
水分 g 14.9 14.9 14.9 14.9 14.9 14.9 14.5 14.5
たんぱく質 6.0 (5.6) (5.4) 5.3 5.8 6.5 11.0 11.9
脂質 2.5 (1.7) (1.4) 0.8 1.0 1.9 1.3 (1.5)
炭水化物 71.3 74.1 75.8 75.6 77.4 72.2 66.8 69.5
食物繊維総量 3.0 1.4 0.9 0.5 (0.5) 1.3 2.7 2.1
ナトリウム mg 1 1 1 1 Tr 1 Tr Tr
カリウム 230 150 120 89 97 150 89 86
カルシウム 9 7 6 5 5 7 17 21
マグネシウム 110 64 45 23 33 51 23 36
リン 290 210 180 95 100 150 64 86
2.1 1.5 1.3 0.8 0.2 0.9 0.9 1.0
亜鉛 1.8 1.6 1.5 1.4 1.5 1.6 0.8 1.0
0.27 0.24 0.23 0.22 0.22 0.22 0.15 0.19
ビタミンE
α-トコフェロール
mg 1.2 0.8 0.4 0.1 (0.2) 0.9 0.3 0.5
ビタミンB1 0.41 0.30 0.24 0.08 0.12 0.23 0.09 0.13
ビタミンB2 0.04 0.03 0.03 0.02 0.02 0.03 0.04 0.04
ナイアシン当量 8.0 (5.1) (3.2) 2.6 3.1 4.2 3.1 3.6
ビタミンB6 0.45 0.28 0.20 0.12 (0.12) 0.22 0.06 0.08

資料:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂) 増補2023年」
注 :数値はすべて、100g当たりの値。( )は推定値。たんぱく質は「アミノ酸組成によるたんぱく質」。ただし、※印があるものは「たんぱく質」の値。脂質は「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」。炭水化物は「利用可能炭水化物(質量)」。ただし、※印があるものは「差引き法による利用可能炭水化物」の値。

(2)たんぱく質

米のたんぱく質は6%(めしでは2~3%)ほどですが、米・米加工品から得られる20歳以上の者の1日当たりのたんぱく質摂取量は7.5gになり、総たんぱく質摂取量72.2gの10.4%を米が占めていることになります。米のたんぱく質の主体はグルテリン系のオリゼニンからなり、アミノ酸組成に基づくたんぱく質の栄養評価指標であるアミノ酸スコアは、玄米87、精白米80です。
小麦はプロラミン系のグリアジンとグルテリン系のグルテニンが主要なたんぱく質です。小麦(強力粉・1等)のアミノ酸スコアは42で、米は小麦に比べると良質なたんぱく質であるといえます(図表4)。米などの穀類ではリジンが第一制限アミノ酸であることが多く、大豆製品や肉類、魚類などを組み合わせて摂取することで、アミノ酸の補足効果が期待できます。

図表4 米と小麦のアミノ酸価

アミノ酸価 第一制限アミノ酸
米(精白米) 80 リシン(リジン)
小麦(強力粉・1等) 42 リシン(リジン)
  • 食品に含まれるたんぱく質の各必須アミノ酸量をアミノ酸評点パターンと比較した際に、最小値を示すアミノ酸。その値(百分率)がアミノ酸価(アミノ酸スコア)となる。最小値が100を上回る場合にはアミノ酸価は100となる。

注:アミノ酸評点パターンは2007年(WHO/FAO/UNU)1~2歳の数値。

(3)脂 質

米の脂質は、玄米が2.5%で、搗精した精白米では0.8%になります。脂肪酸組成は、玄米ではリノール酸とオレイン酸が多く、次いでパルミチン酸となり、精白米はリノール酸がもっとも多く、次いでパルミチン酸になります。
米は、脂質の少ない食品であるものの、体内で合成できないために食事から摂取する必要がある必須脂肪酸のリノール酸を含む特徴があります。

(4)微量成分

米のミネラルは、小麦と比較して、リンやマグネシウムを比較的多く含みます。ビタミン類に関しては、胚芽米や玄米はビタミンB1を多く含む特徴があります。
以上のような米の種類による成分の違いは、各部位による成分差によるところが大きく、近年、新たな性質をもつ米の品種の改良などが進んでおり、多様な特性をもつ米の開発が期待されています。

女子栄養大学 栄養学部 准教授 宮澤紀子

参考資料

  • 桒田寛子、寺本あい、治部祐里、田淵真愉美、渕上倫子「玄米飯の物性と微細構造」日本調理科学会誌44,137-144(2011)
  • 増村威宏、佐生 愛、齋藤雄飛「イネ種子の電子顕微鏡的解析」顕微鏡49,211-215(2014)
  • 『栄養・食糧学用語辞典(第2版)』建帛社
  • 文部科学省「食品成分データベース」
    https://fooddb.mext.go.jp/[外部リンク]
  • 田所忠弘、安井明美 編著『新食品学Ⅱ』建帛社
  • 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」
    https://www.mhlw.go.jp/content/001066903.pdf(PDF:6.92MB)